《訪問先研究部門の概要》

  「本概要は物質・材料研究機構要覧、材料研究所要覧及び産業技術総合研究所要覧、並びにAIST Todayの記事を参照し纏めたものである。」

【材料研究所】

独立行政法人物質・材料研究機構の中核をなす研究所の一つであり、金属とセラミックスを主体にした機能材と、そのシステム化、複合材料等に関する基礎的研究、構造材料の創製から評価までの総合的研究開発を推進している。

[複合材料グループ]:ディレクター 香川 豊氏

 優れた力学特性と信頼性を備えた多機能複合材料の実現を狙いに、「多機能特性発現を可能にする多種材料系の最適化」「ナノ構造を利用した界面力学特性の最適化」「フォトンやフォノンと材料の相互作用の測定」「ナノバイオ構造解析とバイオミメティックスデザインを用いた複合材料への応用」等の研究を実施。また、既存の材料では実現できない特性を有する金属/セラミックス/ポリマー系複合材料の実現を目指したアプローチを行っている。

[機能融合材料グループ]:ディレクター 新谷 紀雄氏

 材料の微細構造を制御することにより高度な機能を発現する機能材料の開発、自己修復機能やアクチュエータ機能を持つ構造材料の開発を狙いにした研究を行っている。これまでに粒子アセンブル技術による多機能電子材料等の開発、三次元的ハニカム構造に有機物を内包した軽量でエネルギー吸収性及び制振性を有するクローズドセル構造材の開発等の成果がある。

[微粒子プロセスグループ]:ディレクター 目 義雄氏

 湿式法や熱プラズマ法による微粒子の作製、微粒子の分散、凝縮などミクロナノオーダーの構造制御、配列制御、燒結法など微粒子プロセスの高度化により、力学特性、電磁気特性の優れた複合体、積層体傾斜組織体、高配向構造体など多成分系特所構造物質を創製する研究を実施。

[溶射工学グループ]:ディレクター 黒田 聖治氏

 溶射コーティング法によって、材料表面の耐食性や耐熱性等の高機能化を図る研究を実施。溶射プロセスの改良による高耐食合金コーティングの製造等の成果を挙げている。

【産業技術総合研究所】

旧工業技術院の15研究所が産業科学技術を先導する機動的研究組織として再編された独立行政法人の研究所。イノベーションを推進する先端的研究、長期的政策推進のための研究、科学基礎研究の三極の推進を狙いに、絞り込まれた重要な研究課題を期間を限って集中的に行う23の「研究センター」、一定の継続性を持った研究展開とシーズ発掘を役割とした研究者提案型の「研究部門」22部門、未来技術として期待されセンター予備軍としての性格を持つ「研究ラボ」から構成されている。

[界面ナノアーキテクトニクス研究センター]:研究ユニット長 清水 敏美氏

 白いナノチューブとも言われる有機ナノチューブの組織化及び利用技術に関する研究を推進。常温、大気圧に近い温和な条件下で所要の微細資源を得る創製システムはエネルギー環境問題や医療福祉問題を解決するナノ構造材料、ナノ機能素子づくりに寄与するものと期待されている。

[ナノカーボン研究センター]:総括研究員 湯村 守雄氏

 炭素の物性の解明と共に、炭素系物質・材料に関わるナノスペース科学を構築。従来材料では到達し得ない電気伝導性、熱伝導性及び機械的強度を発現するナノカーボンを革新的製品の創出に繋げる研究を推進。ナノチューブ量産技術、構造評価技術などに多くの成果を得ている。

[先進製造プロセス研究部門]:副研究部門長 永寿 伴章氏

 「環境調和型製造技術」「マイクロ・ナノファブリケーション技術」「信頼性工学技術」を重点研究課題として基礎・基盤技術の開発を進めている。エアロゾルデポジッション法によるセラミック圧膜形成技術と圧電材料、夢の耐熱材料と期待されている融液成長複合材料(1500℃以上)の開発、超軽量素材「発泡金属」など機能材料の開発成果が多い。

[計測フロンティア研究部門]:副研究部門長 秋宗 淑雄氏

 先進的計測制御機器・システム開発や計測技術を高度に活用した計測・解析技術開発を行う。本部門の一部をなす構造体診断技術研究グループにおいては、光ファイバーセンサー、超音波センサー、磁気センサーを用いたモニタリングの研究を進め、構造体及びその構成材料に発生する損傷・劣化を診断する技術開発に成果を挙げている。

[(旧)振動制御研究室]:菊島 義弘氏 (現エネルギー利用研究部門)

 センサー自身に分別能力を持たせたスマートセンサーの開発。平板状構造物に張付けしたセンサー自身の積和演算機能を利用することで矩形平板内に存在する振動モードの分離・独立や同じ属性を持つグループに分離、アクチュエータ、コントローラーを組み合わせ不要な振動の制御を行う開発例がある。また、類似のシステムを利用したスマートストラクチャー、スマートウイングの研究事例がある。

[エレクトロニクス研究部門]:葛西 直子氏

 本部門では情報処理デバイス技術について、革新的技術の創出を目指した新電子現象・材料の探索・解明・制御に関する研究と、得られた成果のデバイスへの応用を進めている。「新しい非破壊検査技術」は被検体に電流を流した際に欠陥部分を電流が迂回することに着目し、迂回電流をイメージングすることによって電流迂回範囲から欠陥発生範囲を推定すると共に、迂回電流量から欠陥状態を推定する新しい非破壊検査技術であり、C/C複合材料を対象に印加磁界発生装置を組み込んだ汎用型装置を開発している。

以上